今回は、好きな映画について。
五社英雄監督の『吉原炎上』をご存知ですか?
明治の吉原を舞台にした1987年の映画です。
撮影所に吉原の遊郭を再現し、そのセットをラストに燃やすというのをテレビでたまたま見て興味を持ったのがきっかけで、この映画を見たのですが、日本の風俗史を知ることができる上、セットや衣装、役者さんたちの演技に魅せられて、繰り返し観る映画の一つになりました。
吉原遊廓は、もともとは日本橋の人形町にあったのですが、大火で燃えてしまったことで、今の浅草寺裏の日本堤へ移転しました。
人形町は、元吉原と呼ばれ、今でも大門通りという通りがあります。
当時の日本堤は沼地で、埋め立てて遊郭の街が造られたのですが、江戸時代の地図を見ると沼地の中に突然四角い街が現れます。
吉原の街はお歯黒どぶという堀のようなものに囲まれていて、入口は大門通り一箇所だったようです。
そして、映画は、この吉原大門に続く一本道を通って、久乃が遊郭「中梅楼」へ売られてくるシーンから始まります。
『吉原炎上』のタイトルが出ると、斎藤真一の絵画をバックにクレジットが出るのですが、この斎藤真一氏の祖母がこの映画の主人公、のちの紫花魁(久乃)になる人物です。
氏が、母親から聞いた祖母の吉原時代の話を書籍にした『絵草子 吉原炎上 祖母紫遊女のものがたり』を東映プロデューサーが本屋で目にし、映画化したものです。
主人公の久乃を演じるのは、名取裕子さん。
女学校に通っていましたが、船長だった父が起こした事故の賠償金のために吉原へ売られてきました。
この久乃を中心に中梅楼で女郎として働く女性たちが、春、夏、秋、冬と季節ごとの主人公としてオムニバス的に物語は進みます。
春の章の主人公は、中梅楼の御職 (今でいうナンバー1)九重(二宮さよこ)。
久乃を将来『中梅楼』の花魁に育てるべく、久乃は、九重の妹分になります。
上客のいる九重ですが、彼女自身は学生の青年にゾッコンです。
久乃に女郎としての手管を教え、久乃の初見世のときは、上客を紹介してくれました。
夏の章の主人公は、藤真利子さん演じる吉里。
九重が去った後に御職になります。
彼女も常連の客と恋仲でしたが、客が株で大失敗したことで、彼女の運命が変わっていきます。
秋の章の主人公は、西川峰子さん演じる小花。
吉里の後に御職になります。
「徳川家の典医の家系だったが、両親が亡くなったため、帝大に通う弟の学費のために働いている。」と周りに吹聴している。
客を取りすぎで肺の病気になってしまいます。
客を取れなくなった小花の代わりに久乃が御職になり、若汐から紫へ名前が変わります。
冬の章の主人公は、かたせ梨乃さん演じる菊川。
久乃が中梅楼に来た頃から、ずっと親切にしてくれ「久ちゃん。」「菊ちゃん」と呼び合う仲です。 要領が悪いため、夏頃に品川の方へ住み替えになってしまいます。
その後、宮大工の棟梁に身請けをされますが、吉原へ戻ってきていました。
この4人に加え、久乃が女郎に成り立ての頃から御職になるまで側でずっと見ていた古島財閥の御曹司、若さんを根津甚八さんが演じています。
簡単にあらずじを書くと、久乃が女郎になり、他の女郎たちと一緒に過ごす中で徐々に花魁としてのプライドを確立し、御職になり、身請けされて吉原を去っていくというもの。
その間に一緒に働いていた花魁たちがそれぞれのラストを迎えます。
そして最後は、タイトル通り吉原が大炎上して終わりです。
上記の人々に加え「中梅楼」を切り盛りするおちかさん(園佳也子)、ご主人(山村聡)、女将さん(佐々木すみ江)、久乃を連れて来た今朝次(成田三樹夫)といい、どの役もその人にしかできないような存在感で映画全体に重みがあります。
<映画のみどころ>
吉原の街を再現したセット
花魁の衣装
中梅楼を回すおちかさんの口上
若さん演じる根津甚八さんの色気
小花花魁の「ここ噛んでー!」のシーン
3人の花魁と菊川の迫力演技
田舎から出てきた少女から御職に成り上がっていく久乃
私は、この『吉原炎上』の中で久乃と吉里が一緒にかき氷を食べているシーンが好きです。
真夏で汗だくになりながらかき氷を食べていて、後ろでは金魚売りの声が聞こえます。
着物は久乃が薄紫を着て黄色の帯を巻いています。
夏に着物の色が薄いのは本人だけでなく、その着物を見ている人も涼しさを感じるようにする心遣いもあるのかな....とこのシーンを観て思いました。
どの人も嘘がきっかけで不幸になっているので
「久乃にはどんな嘘があったのだろうか….?」と考えていたのですが、久乃は自分の気持ちに嘘をついたことで、一番大切なものを失ってしまいました。
機会がありましたら、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
海外の友達に一度見てもらいたい映画です。
0コメント